初心者のための宝塚観劇講座

宝塚歌劇団が好きで好きで仕方ない雨宮(あまみや)が、 趣味でお送りしているブログです。 チケットの取り方から、楽しみ方、観劇マナー、 マニアックな楽しみ方まで、ご紹介します。

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みどころをさっさと書かないと、明日は雪組東京公演の初日です。急がなくちゃ!

初心者のための宝塚観劇講座 : 『星逢一夜』のみどころ(1)  
初心者のための宝塚観劇講座 : 『星逢一夜』のみどころ(2)  

こちらの続きです。

第10場 江戸城広間 ー月例拝賀ー

ある意味、ここがこの芝居で最も理解するのに頭を使う場面かもしれません。年貢の取り方「検見取り法(けみどりほう)」と「定免法(じょうめんほう)」については、初心者のための宝塚観劇講座 : 天野晴興のモデルとなった人物、金森頼錦とは?に詳しく書いていますので、参考にしてくださいませ。


第11場 源太の家
源太と泉が夫婦として生活している様子が描かれているのは、この場面だけなんです。それが、雨に濡れて帰ってきた源太に、泉が湯の入った盥を差し出す間の短い会話だけで、どんな夫婦なのかがわかります。上田先生、すごい。そしてのぞ様(望海風斗さん)、みゆちゃん(咲妃みゆさん)のお芝居もすごい。

観劇回数を重ねるうちに、その心情を考えると辛くなっていったのは、汐太(永久輝せあさん)のこと。汐太は晴興のことを「所詮は、あいつは親父らを殺したやつの息子やった」と言います。汐太の父親が殺された(獄門になった)のは、彼が本当に小さい、それこそまだ歩いてもいないくらいの時でしょう。それが、こんなに大きくなって父を殺されたことを恨んでいる。先の一揆の時はまだ小さくて記憶のないはずの汐太がこれだけ憎しみを募らせるほど、村の人々はこの何年もの間、藩主(晴興)への不満を口にしていたのでしょう。村人たちがどれほど辛い日々を送ってきたのか…それを考えると、また悲しくなるのです。

ちなみに、源太の家の奥には、真新しい盥やザルが並んでいることから、源太の職業は基本大工で(小さい頃から櫓建てたり渾天儀作ったりが上手なので)、大工仕事がない時は盥やザルを作って生計を立ててると想像しているのですが、いかがでしょうか。

第12場 櫓の森
泉が子供達を連れて櫓へ行く芝居、大好きです。そして、晴興と泉が二人で話すところ。二人とも客席には背中を向けているのに、その表情が伝わってきます。

泉が晴興に「知らん人です」と言った時の、晴興の寂しそうな顔。泣けます。 そうそう、蛍村の人にとっては「幼い頃一緒に遊んだ優しい紀之介」がリアルで、「晴興」というのは村を荒らした藩主の名前、どこか遠い存在なのではないかと思います。だから「紀之介」と呼ぶ時と、「晴興」と呼ぶ時は、すごく気持ちが違うんだろうなぁ。泉がいう「知らん人」というのは、紀之介ではなく晴興のことなんでしょうなぁ。

それから、源太が泉や子供達を連れて、晴興に見せつけるようにして帰ろうとするのもツボ。

そのあと、晴興と源太が一揆について話をします。ここが、大劇場の初日から千秋楽までの間に大きく雰囲気が変わったところ。源太は一揆を取りまとめる首領ということになっているのですが、初日近辺はまだ一揆に参加してる村人という感じでした。それが、公演が進むにつれ、その首領感がどんどん出てきました。 晴興と責任の重さが対等なくらいまで近づいた、そんな感じです。


第13場A 一揆
もう、誰を見ても辛い。誰の気持ちになっても辛い。誰も悪くない。どうしてこうなってしまったのか。この物語に登場する人物すべてが「逃れられぬ定め」のもとに生きています。晴興は「心殺して、命ゆだねて」その定めに従い、源太は「心を決めて、命捧げて」定めに従う。 

晴興と源太の一騎打ちの場面も、回を重ねるごとに迫力が増し、もはや芝居とは思えぬほどです。源太が倒れても、あくまで主役は晴興。よくお芝居で倒れたほうが必要以上にクローズアップされることがありますが、今回そんなことはナシ。源太は源太の身分にふさわしい、あっけない最期を迎えます。それがまた切なく空しいのです。


第13場B 裁定
晴興と吉宗のわずかなやりとりで、二人の関係性がわかる場面。後半、晴興は「はい」しか言わないのですが、それで十分気持ちがわかります。 


第14場 星逢

晴興と泉の最後の逢瀬。内容は、実際に舞台を見ていただくとして。

櫓の上で晴興が泉を後ろから抱き、 そして肩に手をかけてから立ち去るのですが、ここがもう切ない。泉は晴興の顔を見ることなく、肩に乗せられた手の重みや温もりを感じ、ここに自分の手を重ねているのです。この手が離れた時の気持ちを考えるともう…。雨宮的には、二人が物理的に離れるこの瞬間が最高に辛いです。
 

第15場 星探しの唄

前場からこの場面に入る時に暗転の舞台を3人の子供が横切るんですが、たぶんこの子たち、紀之介と源太と泉の子供の時の着物を着てる。

源太が持っているのは、紀之介のために作ってあげた渾天儀です。なので第4場で源太が櫓で見つけたものとは違います。

まだまだいろんな見所があるのですが、あんまり言い過ぎてもアレなんで。

この物語の切ないところは、みんながお互いの気持ちを知っているということ。知っていながらも、それがうまく交わらない。みんなが相手の幸せを願っている、でもそれも叶わない。よく「夢は強く願えば叶う」というけれど、このお話はそれとは違う側面で強い人間を描いていると思います。こんなことがあっても、それでも人は強く生きていかなくてはいけない。いや、きっと生きていける。お芝居を見ている時はぼんやりした輪郭でしか捉えてなかったのですが、こうして感想を書いてみるとすごく大きなテーマに気付かされます。そして最後に思ったのは、やっぱり女は強いな、と(笑)。強いよね。はい、強いです。

 






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ぼんやりしていると東京公演が始まってしまいます。その前に、なんとか大劇場公演の記憶を記しておかねば…ということで、

初心者のための宝塚観劇講座 : 『星逢一夜』のみどころ(1)

こちらの続きです。

第8場A 星逢祭り

下手花道から祭りの衣装の源太登場、泉への恋心を歌います(笑)。ほんのわずかな、蛍村の幸せな風景。そもそも祭りとは男女が発展するための行事だったという説もあるくらいですので、源太の母・浩(梨花ますみさん)が祭りに乗じて泉との関係を後押しするのも納得です。江戸時代だし。個人的には、三日月に帰ってきた晴興と、それにくっついてきた猪飼秋定(彩凪翔さん)の関係を疑っています(疑わないで)。江戸ではたった一人の友、そんな秋定に「三日月の里を見せてやるのだ」という晴興がもう…なんだか萌えます(笑)。


第8場B 星観の櫓 ー再会ー

ここはもう、見て感じた通りです。


第8場C 星逢一夜

そして前半のクライマックス。晴興、泉、源太、貴姫(大湖せしるさん)、誰の顔を見ても切なくなります。雨宮さん的みどころは、最後のほうで泉が源太のほうに向かって歩く時、源太が“あ、やっぱりこっちきてくれる?”って顔で「泉」って呼ぶ(マイク入ってない)のですが、すぐに違うと悟る時。超切ないです。「泉」って言うようになったのは大劇場公演の終盤からだったと思います。泣ける。


第9場 江戸城近くの橋の下

話の内容は深刻なんですが、娘役さんたちの色っぽい夜鷹姿が拝める場面。新人公演後、きゃびい(早花まこさん)、いのりちゃん(此花いの莉さん)の迫力が増しています。


そういや「夜鷹」って、なんとなくわかるけどちゃんとした定義って何だろうと思ってみたら「下級の娼婦」。享保年間ではなく、天保年間の資料しか見つからなかったのですが、やはり生活が厳しくなるとこうして生きる女性が増えた。見た目も、取り締まりの目をかいくぐるために、そんへんの女性とあまり変わらなかったようです。日暮れになると手ぬぐいをかぶり、筵を持って現れていたんだとか。平均年齢は23~25歳くらいで、四谷鮫ガ橋(いまの新宿区若葉、南元町あたり)あたりを溜まり場としていたとも言われています。天保年間の資料によると花代は江戸では24文と決まっていたそうですが、そこに祝儀をつけて100文くらい支払うのが常だったようです。そば一杯が16文だったことから考えると、恐ろしく安い。夜鷹ちゃんたちがあんな雰囲気になるのもわかります。


この夜鷹の中で注目は、唯一この場面で「売れる」雛月乙葉さん。りーしゃ(透真かずきさん)と下手袖に消えていった後、一人で戻ってくるときの色気が…なんだかすごいです。 

 




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